面会活動に参加している、ボランティアの声をご紹介。
岩谷 栄美さん
私は、日ごろ、司法書士・産業カウンセラーをしていますが、2018年度より、大阪精神医療人権センターの面会ボランティアスタッフとして、定期的な精神病棟への面会ボランティア活動に参加しています。
きっかけとしての明確な出来事があったわけではありません。
それまでの仕事を含めた日常生活のなかで、様々な疾患を抱えた方々との大切な出会いがあり、その数々の出会いに導かれて、今、ここにいます。
病院へ面会に伺うときは、いつも少し緊張します。何回もお会いさせて頂いている方でも、初めてお会いする方でも、それは変わりません。
それは、お互いの大切な時間を共有することに対する畏れと、何か出来ることがあるのだろうか?という不安からくるものかも知れません。
病院の面会場所は、個室、病室など。ときには、病室のベッドで身体拘束をされた状態のままの方と面会することもあります。
面会の際、伺う話の内容も様々です。入院に至る経緯や現在の状況、将来への思いなど、その方その方のペースで対話は進みます。話の内容によっては、こちらから、退院を含めた処遇改善についての情報提供等を行うこともあります。
又、時には、ご本人とだけでなく、病院スタッフの方も一緒に交えて対話を試みることもあります。立場の違う三者同士が、それぞれにお互いの話を聴こうとその場を設けられる事自体を、希望のように感じます。そして、そのような場にいることが出来ることを、面会ボランティアとして参加している私自身、とても有り難いことだと感じています。
一方で、ときには、面会に伺っても、一見さしたる会話もなく、沈黙の時間を過ごすということもあります。
しかし、それも、共に過ごす、ということの出来る大切な時間だと私は考えています。
面会ボランティアとして「その人に、会いに行く」ということは、「私達は、あなたに心を寄せています」「ともにいます」という大切なメッセージだと思っているからです。
また、伺わせていただこうと思います。
榎原 紀子さん
2018年7月に開催された大阪精神医療人権センター「個別訪問ボランティア養成講座」を受講し、面会活動に参加させていただいています。
私は精神科クリニックで精神科ソーシャルワーカーとして働いた経験の中で通院されていた方の入退院支援をする際、常に入院時から退院支援を意識し責任を感じながら関わってきました。うまくいくことも、うまくいかないこともありました。うまくいかないときは、その方の様子が徐々に見えなくなり、互いに伸ばし合っていた手が離れていくのを感じました。入院された方や病院と風通しの良い関係を維持するためには、その方の病状だけではなく、精神科医療の特性や、クリニック・病院・地域側の事情など様々なハードルがあり、それらが入院の長期化や、準備が不十分なままの退院の要因にもなっていると思います。
特に大きな要因として、支援者(病院・地域とも)がその方の声に耳を傾ける時間が圧倒的に少ないことが考えられます。入院治療支援チームに、「調子の悪い患者さん」ではなく「生活者」としての姿やストレングスを知ってもらい、生活支援チームとの協力体制のもとで、ご本人が中心となって、継続的に退院後の生活の準備を行う作業が丁寧にできれば、かなりの問題は解消されるのではないかと感じています。
私は、実際にその方と出会い「○○さん」というお一人お一人の人生に触れることに大きな意味があると感じています。面会活動では、実際にお話を伺い対話を重ねる中で、その方らしい自由な生活を取り戻せるよう一緒に取り組むことがあるのではないかと考え、その方の希望の実現の可能性を探っています。
大阪精神医療人権センターが長年コツコツと続けてこられた個別相談活動(電話相談、面会、手紙)は、入院中の方お一人お一人の声を丁寧にお聞きし、「人権」についてお伝えし、その方への関わりを通して精神科入院治療の環境の変化を促す、人と人とのつながりを大切にした貴重な活動であると感じています。微力ではありますが、プラスの関わりを重ねることにより少しずつでも「人権」を意識した関わりの輪が広がることを願って、私もコツコツと活動していきたいと思っています。
森本 康平さん
2016年の暮れに祖母が大阪の精神病院に入院しました。見舞い中に、閉鎖病棟で日記や本を取り上げられたことに怒っていた祖母に「この病院のルールは厳しすぎる。あなたがここの職員になって病院を変えなさい!」と言われたのを機に、日本の精神病院の歴史などに興味を持ち、学び始めました。当時デンマーク留学を予定していた僕は、翌年春に、デンマークの精神病院やシュク・インフォ(PsykInfo)と呼ばれる、精神疾患や支援団体などの情報を国民に広め、無料カウンセリングなどをしている公的施設を見学し、精神科医や精神障害者の施設で働いていた日本人の方に話を聞いたりしました。「自分(支援者)のものさし(価値基準)でものごとを判断するのではなく、その人(入居者)のものさしを探り、その人の世界を冒険していくのが仕事の醍醐味だ」と、その日本人の方には教えてもらいました。
日本に帰ってきて就職してから人権センターのボランティアをはじめ、1~2か月に1度ほどのペースですが、面会に行かせてもらっています。まだ訪問した病院は少ないですが、北欧に比べると精神病院の職員数が少なく、入院中の方ひとりひとりに丁寧に向き合って、病気があっても本人の望む生活への移行を支えていくということが、病院の職員だけでは難しいように感じています。デンマークも、今でこそ地域での支援体制が整っていますが、1970年代に地域移行を進め、病床を一気に減らした時期には、社会的な混乱があったようです。人権センターのように病院の中と外をつなぐサービスと、地域で精神障害者を支えていくサービスがより充実して、「症状が不安定でも外で生活する手段がある」という状況を作ることが、ご本人がより自分の望む生活を叶えやすくすることに繋がっていくように思いながら、活動しています。
生田 香織さん
私は、2017年度の個別相談ボランティア養成講座を受講後、面会・電話相談活動をしています。
養成講座では、これらは「『声をきく』~入院者の立場にたった権利擁護活動を実践する~」ものであると理解しましたが、実際に入院中の方からお話を聞いていく中で、その必要性も理解されるようになりました。
電話相談では、入院中の方ご自身から連絡が寄せられます。面会では、病棟内まで足を運びます。思うままに話していただき、それを聞いていくことが活動の中心となります。その中で、ご自身がどうしたいのかを確認していったり、そのためにご本人に出来ることを整理してお伝えしたり、法制度や社会資源の説明をしたりもします。
人権センターも入院中の方が利用できる社会資源の一つです。ただ、私たちには入院中の方に代わって動くといった代理行為ができないこともお伝えしています。自分のことを自分で決めて行動するといった権利が制限される状況で、現状を何とかしたいと連絡をしてこられた方お一人お一人の思いを応援するような関わりができたらと考えながら活動を続けています。
またこの活動は、人権センターの活動趣旨に賛同する会員の方々、今日までその存続に尽力してこられた方々に支えられているものであり、入院中の方も私も、その方々に背中を押していただいているのだと思っています。
これまで入院中の方やそのご家族の方、病院で働く職員の方や人権センター会員の方からも、それぞれの立場での様々な思いを聞いてきました。正解やゴールはわかりませんが、入院中の方の立場に立つ私にできることを誠実に、この活動を続けていきたいと思います。
大倉 弘子さん
2016年のボランティア養成講座の受講を信頼する方に強く勧められて受講しました。それから私の面会活動が始まりました。勧めて下さった方のおっしゃった通り、面会活動は意義とやりがいのあるものでした。
面会を希望される方は、病院の公衆電話付近に掲示された人権センターの電話番号を見て、必死の思いで電話してこられます。退院したいけど、どうしたらいいのか教えてほしいとか、自分の気持ちをゆっくり聴いてほしいなど、いろいろな思いを持ちながら長期入院されている方々が大半です。
実際に病院に伺ってもご本人から面会を断られることもあります。「面会に来てもらったとき、看護師さんに『どうする?』と聞かれて迷っていると、『迷うんだったら、今日は止めたら』と言われて、せっかく来て下さったのに面会をお断りしたんです。でも、人権センターは見捨てないで、忘れないでまた面会に来てくださって、本当にうれしいです」と言う方がいらっしゃいました。医療関係者のみなさま、ご本人が迷ってらっしゃったら、「会うだけでも、会ってみたら?」とお勧め下さい。私たちと一緒に寄り添い続けましょう。そこに一緒にいてくれて、自分の話に耳を傾けてくれる…それだけで、勇気づけられたり、生きる希望が湧いてくるのではないでしょうか。
「なかなか退院できないから,退院したい気持ちに蓋をしてここで楽しく生きようとしているだけ」「退院してもう一度生き直したい」など入院中の方のお話には考えさせられます。共生への思いや、だれもがだれをも排除しない社会を構築しなければならないという気持ちが自分の中にあるか確認できる機会でもあります。
私は相手にとって安心できる存在になれるように、服装や声のトーンなどにも気を配るようになりました。面会活動に参加することによって自分が変わっていくのが解ります。
『星の王子さま』に出てくるキツネが「大事なものは目にみえないんだよ」、「心の目でみなくっちゃ」…と王子さまに教えます。ほんとに名言だと思いませんか。そう思って、面会活動に参加しています。