精神障害者の人権保障を目指して
明治以降、先進国としての体裁を整えることを急ぎ、この国では数十年にわたり精神障害者の隔離・収容を推し進めてきました。そしてその最前線には、間違いなく私達精神科医が居たのです。1960年代、『ノーマライゼーション』の理念が世界を駆け巡り、私達の先輩医師達も、この国の精神科医療の人権軽視に異議を唱えます。この時から、私達精神科医は、精神障害を抱える人達の人権に無関心ではいられなくなったのです。
精神障害を抱える人が地域で当たり前に暮らすことは容易ではありません。未だに周囲の偏見や無理解があることは皆さんもご存じだと思います。多くの人にとって精神障害は他人ごとでしかないのです。認知症であれば「明日は我が身」とばかり、一心に情報を集めますが、精神障害となるとまるで関心がないのです。何も知らない人達が、事故や事件を精神疾患と安易に結びつける報道に接した途端、一様に眉をひそめるのです。そういう社会で、そういう地域で、当たり前に、普通に暮らす為に、ただそれだけの為に、精神障害を抱える人達には余計な努力や忍耐が必要になります。人付き合いが得意ではない彼らが地域で孤立してしまわないよう、バリアフリーなんかではないこの国で自分達の居場所を見失わないよう、少しでも障壁を取り除きたいと、当協会(大精神)では活動を続けています。