「はじめに」にも記したように、精神障害者の『人権』について、日本国憲法や国際連合での決議など国際社会において一般化・普遍化している障害者を含む人権の意義と基本的な考え方を踏まえ、改めてその意味や内容を確認して、精神病院における入院患者の人権尊重を基本とした適正な医療の提供と処遇の向上を図るために、本審議会は大阪府に意見具申を行なうものである。
このため、本審議会では、審議にあたっては、府民に公開された場で、形式にとらわれず、大阪府の関係部局からの出席を求め、積極的な質疑を行なうとともに、立場の異なる委員間においても、活発な意見交換等を積み重ね、意見具申を取りまとめた。
国においては、従来の課題である人権に配慮した精神医療の確保及び社会復帰の促進に加え、地域生活に着目し、その支援のための「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律」の大幅な改正(平成 11 年(1999 年))6月4日公布)を行なった。
また、大阪府においては、少子高齢化を背景に、ますます増大・多様化する府民のニーズに対応するため、保健医療分野と福祉分野が一体となった総合的なサービスの提供をめざし、保健衛生部と福祉部を統合して「健康福祉部」を設置するなどの大規模な組織改革が行なわれるとともに、来る 21 世紀を「人権の世紀」とするため「大阪府人権尊重の社会づくり条例」を制定し、障害者をはじめすべての人の人権が尊重される社会づくりに向けて積極的な取り組みを進めているところである。
大和川病院事件以降も、全国的にみると精神病院における人権侵害事案が散発している。
この意見具申が、精神病院の入院患者の人権の尊重を基本とした適正な医療の提供と処遇の向上に資する、大きな第一歩となることを願わずにはいられない。
本審議会は、大阪府が、この意見具申に託された精神障害者やその家族の願いを十二分に汲み取り、今なお差別や偏見を受けることが多い精神障害者のための医療の質の向上に最大限努力をすること、また、この意見具申の内容が入院患者の皆さんの手に容易に渡ることができるように努めること、また、そうすることをその病院が誇れるようになることを期待するものである。