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Ⅱ 人権擁護の現状と課題│意見具申(平成12年5月)

2021.05.03 UP

1 精神医療審査会

(1)精神医療審査会とは

精神保健福祉法第 12 条から第 15 条まで及び第 51 条の 12 の規定により、精神障害者の入院の要否及び処遇の適否に関する審査を行うため、都道府県及び指定都市に、精神医療審査会(以下、一部を除き「審査会」という。)を設置することとされている。これは、地方自治法第 138 条の4第3項にいう地方公共団体の執行機関(都道府県知事・指定都市の市長)の附属機関として設けられるものであり、都道府県知事や指定都市の市長から独立した審査権を持つ機関である。審査会は、国際人権B規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)の精神を徹底するため、昭和 62 年の法律改正により新しく設けられることとなったものであり、大阪府においては、『大阪府精神医療審査会』として、昭和 63 年7月1日から審査を行っている。

(2)審査会の設置

審査会委員は、平成 11 年(1999 年)の精神保健福祉法改正まで、法定数が5人以上 15 人以内とされ、精神障害者の医療に関し学識経験を有する者(指定医である者に限る。医療委員)、法律に関し学識経験を有する者(法律委員)及びその他の学識経験を有する者(有識者委員)のうちから、都道府県知事又は指定都市の市長が任命することとされている。

また、審査会は、指定医3人、法律に関し学識経験を有する者1人及びその他の学識経験者(有識者委員)1人をもって構成する合議体で審査を行うこととされている。

大阪府においては、かつての法定数上限の 15 人の審査会委員による3つの合議体(A、B及びC合議体)からなる審査会を設置しており、各合議体は、6週間以内に1回程度の頻度で開催(3 合議体で1カ月当たり2~3回開催)されている。

(3)審査会の審査

精神保健福祉法第 38 条の3及び第 38 条の5の規定により、都道府県知事又は指定都市の市長は、次の場合には、審査会に審査を求めなければならないこととされている。

[1] 精神病院の管理者から、措置入院者に係る6月ごとの定期の報告、医療保護入院者に係る入院時の届出及び医療保護入院者に係る 12 月ごとの定期の報告を受けた場合、その入院の必要があるかどうかに関しての審査

[2] 入院患者又はその保護者等から退院又は処遇の改善のための請求を受けた場合、その入院の必要があるかどうか又はその処遇が適切であるかどうかに関しての審査

審査会は、必要があると認めるときは、関係者の意見を聴くことができることとされている。また、上記[2]の審査を行うに当たっては、原則として当該請求を行った者及び当該審査に係る患者の入院している精神病院の管理者の意見を聴かなければならない。

大阪府においては、医療委員1名、法律委員又は有識者委員1名、事務局員1名の計3名で精神病院に出向き、審査のための実地面接を行っている。

都道府県知事又は指定都市の市長は、審査会の審査結果に基づき、その入院が必要でないと認められた者を退院させ、又は精神病院の管理者にその者を退院させることを命じ若しくはその者の処遇の改善のために必要な措置を採ることを命じなければならないものとされている。また、退院等の請求を行った者に対しては、審査の結果及びこれに基づき採った措置を通知するものとされている。

指定都市(大阪市)との関係において、大阪市長の命令によって措置入院した者に係る請求については、大阪市の審査会が審査することとなる(「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の大都市特例の施行に係る留意事項について」平成8年(1996 年)3月 21 日付け厚生省保健医療局精神保健課長通知)が、医療保護入院者の請求に係る審査は、当該入院病院所在地を管轄する知事、つまり大阪府の審査会が審査することとされている。しかし、大阪市長が保護者となっている医療保護入院者の退院や退院後の生活支援につなげるためにも、大阪市域の入院患者に係る審査は、大阪市の審査会で審査することが望ましい。

なお、審査会の実績については、資料編2、1の[1]~[4]に記載している。

(4)精神保健福祉法第 38 条の6第1項に基づく精神病院入院者に係る実地審査

入院患者又はその保護者等からの退院又は処遇の改善のための請求に基づく審査会による入院患者に対する審査(実地面接等)の他に、精神保健福祉法第 38 条の6第1項に基づき、厚生大臣、都道府県知事及び指定都市の市長は、必要があると認めるときは、当該職員若しくはその指定する指定医に、精神病院に立ち入り、精神病院に入院中の者その他の関係者に質問させ、又はその指定する指定医に、精神病院に立ち入り、当該精神病院に入院中の者を診察させることができる。これは、審査会と同様に昭和 62 年(1987 年)の法律改正により設けられた制度である。

この規定を受けて、大阪府においては、平成元年(1989 年)度から『大阪府精神病院入院者実地審査実施要領』に基づき、[1]精神病院に入院した後、概ね3月を経過した措置入院者、[2]知事が実地審査の必要があると認めた医療保護入院者に対して実地審査を実施している。[1]について、措置入院者に対する実地審査は、1名に対し原則として年1回実施しており、また、[2]において、「知事が実地審査の必要があると認めた」とは、精神病院の管理者から医療保護入院者に係る入院時の届出及び医療保護入院者に係る 12 カ月ごとの定期の報告を受けた場合における審査会による入院の必要性の審査の際、審査会から知事に対して、合議体の審査の必要上実地審査を行うよう要請された場合等をいう。

なお、上記[1]、[2]に該当する入院者に対して審査会による実地面接を実施したときは、その年においては実地審査を実施したものとみなすことができる運用を行っている。精神病院入院者実地審査の実績については、資料編2の2に記載している。

(5)精神保健福祉法改正に伴う審査会の見直し

今回の精神保健福祉法の改正により、審査会についても見直しが行われた。主な改正内容は3 点あり、[1]審査会の事務局、[2]審査会委員の報告徴収権、[3]審査会委員数の制限の撤廃などの見直しである。

[1] 審査会の事務局
審査会は、執行機関の附属機関として独立した第三者機関としての役割が期待されているにもかかわらず、地方自治法第 202 条の3の規定により、執行機関である都道府県知事や指定都市の市長の担当部局において庶務その他の事務を掌ることとなっている。
この場合、審査実施者が審査についての庶務を被審査者(都道府県知事等)に委ねており、また、都道府県知事等は措置入院を行う主体でもあるため、利益相反の関係に立つこととなる。
このため、通常、都道府県等の担当課とは別の系統の機関として組織され、職務遂行において比較的独立性が高く、医師、精神科ソーシャルワーカー、保健婦(士)等の専門職種が配置され専門性のある精神保健福祉センターに庶務その他の事務を行わせることとなった。これを受けて大阪府においても、平成 14 年度(2002 年度)から府立こころの健康総合センターにおいて、審査会の請求の受付や審査会の開催事務、審査会の審査の遂行に必要な調査等を取り扱うことができる態勢が整備される予定となっている。

[2] 審査会委員の報告徴収権
法改正以前の審査会は、審査において疑義がある場合においても関係者の意見を聴くことができるだけで、診療録等の関係書類の検査権が認められていなかった。しかしながら、審査を行う際には、定期病状報告等の書面審査や関係者からの意見聴取だけでは不十分な場合があり、患者の診療録の検査、患者の診察等を行い、当該病院でどのような医療が行われていたかを審査することが必要な場合がある。
このため、審査会の報告徴収権限として、関係者からの意見徴収権限に加えて、(a)診療録等関係書類の提出を求める権限、(b)医療委員に患者の診察等を行う権限、(c)関係者の出頭を命じて審問する権限が付与されることとなった。また、報告徴収権限を担保するために、当該報告徴収に協力しない場合等の罰則規定が新たに設けられた。

[3] 審査会委員数の制限の撤廃
法改正以前の審査会の委員数は、5人以上 15 人以内とされていた。しかしながら、大阪府では毎年度、定期病状報告等の審査件数が9千件前後、退院請求等の審査件数が百数十件に達するなど、全国1、2位の審査件数を抱えており、かつての法定上限 15 人の委員数では、今後、審査を迅速、的確に処理できない状況に陥ることも考えられる。

このため、大阪府内の病床数、過去の平均審査日数等を勘案しながら、必要な委員数を確保していかなければならないという課題を抱えている。

2 精神病院に対する指導監督

近年、医療需要や疾病構造の変化、医学・医術の進歩、医療ニーズの高度化・多様化、患者の受療行動の変化など、医療を取り巻く環境は大きく変化しており、府民が健康で文化的な生活を送るためには、こうした変化に対応して良質かつ適正な医療の供給が極めて重要である。

とりわけ、精神科医療の分野では、その症状の特異性から精神病院における入院患者への処遇について必要な行動制限を行うことができると精神保健福祉法に定められており、人権に配慮した適正な医療の確保を図りつつ、良質な精神科医療の提供が望まれるところである。

しかしながら、一部の精神病院において、この法律の趣旨を逸脱した運用がなされ、既に廃院となった大和川病院の事例に見られるような精神障害者への著しい人権侵害を呈する不祥事が相次ぎ発生し、精神病院に対する不信を招き、今後の精神保健福祉施策の推進を阻害しかねない事態となっている。

こうしたことから、平成 10 年(1998 年)3月3日、厚生省関係部局長から各都道府県知事等に対して、医療法に基づく医療監視や精神保健福祉法に基づく精神病院実地指導などの指導監督の徹底について通知されたところである。

(1)医療法に基づく医療監視

医療監視は、医療法第 25 条の規定に基づく立入検査により、病院が医療法その他の法令により規定された人員及び構造設備を有し、かつ適正な管理を行っているか否かについて検査することにより、病院を府民に対し、科学的で、かつ適正な医療を行う場にふさわしいものとすることを目的として実施しているところである。

医療法に基づくすべての病院を対象に、基本的に毎年度1回、医療従事者に関すこと等 106 項目について、監視を担当する各保健所において、医師、放射線技師等、様々な職種の職員、概ね10 名程度のチームを組んで確認を行っている。

医療従事者の状況等については、病院から提出のあった職員名簿と出勤簿又はタイムカード、勤務割表等の10 数種類の書類を相互にクロスチェックすることにより行っている。行政が行っている医療監視は、医療の実態を把握するための調査が中心となるべきであるが、従来、書類調査が中心となってきたことを反省し、大和川病院事件を含む安田系3病院の事件以来、大阪府では、いくつかの見直しを行ったところである。

例えば、[1]複数の病院を有する法人に加え、同系列と思われる病院についての同日医療監視の実施、[2]必要に応じて、精神保健福祉法や健康保険法などを所管する関係各課との合同調査の実施、[3]医療法上適切を欠く疑いのある病院に対しては、事前に通告を行うことなく、抜き打ちで医療監視を実施するとともに、必要に応じて医療従事者に対する面接調査を実施するなどである。

なお、平成9年(1997 年)6月 27 日に、厚生省が通知した「医療監視の実施方法等の見直しについて」は、大阪府のこのような見直し結果を基に作成されたところである。

(2)精神保健福祉法に基づく精神病院実地指導

精神保健福祉法に基づく精神病院実地指導については、大阪府内の精神病床を有する病院に立ち入り、関係法令の遵守及び入院患者の適正な医療及び保護の状況を調査するとともに、必要な指導が行われているところである。

大和川病院事件においては、不祥事が発生するたびにその都度、実地指導がなされたが、改善指導に留まり、実効性ある改善命令が発せられなかったことや入院患者等からの苦情などに対し、迅速に対応する体制が不十分な状況が明らかになった。

大阪府においては、この大和川病院事件を真摯に受け止め、平成 10 年(1998 年)4月に保健衛生部健康増進課精神保健室に「病院指導班」を設置するとともに、「大阪府精神病院実地指導実施要領」を定め、医療監視との合同実施や入院患者からの聞き取り調査の実施、大阪府精神医療審査会との連携など、実地指導の方法及び指導項目を明確にし、指導監督体制の強化が図られたところである。

また、今回の精神保健福祉法の改正により、改善命令に従わない場合に、業務停止命令などの罰則規定が設けられたが、入院患者の行動制限など人権に配慮した処遇という観点での客観的・数値的処遇基準の設定が未だ不十分であり、相対的な改善指導に留まっている現状にある。

3 旧安田系3病院に係る不祥事の反省を踏まえた関係部署の連携の必要性

大阪府においては、精神病院に関係する各種の指導監督について、前述したように、医療法に 基づく医療監視を実施する部署、精神保健福祉法に基づく精神病院実地指導を実施する部署や 健康保険法、国民健康保険法などの社会保険を所管する部署、生活保護法を所管する部署など、関係法令ごとに複数の指導監督部署が縦割的な体制を採っている。

大和川病院事件を含む旧安田系3病院に係る不祥事の反省を踏まえ、医療現場のあり様に応じたこれら関係部署の連携を強化するとともに、指導監督の一元化が望まれるところである。

3 第三者機関としての人権擁護機関

第三者機関としての人権擁護機関としての機能を有し、障害者や高齢者に対する権利擁護、自立支援を目的とした窓口を設けているものには、「大阪後見支援センター“あいあいねっと”」、「大阪精神障害者連絡会“ぼちぼちクラブ”」、「大阪精神医療人権センター」、「高齢者・障害者総合支援センター“ひまわり”」、「大阪府障害者110番」、「大阪府同和地区総合福祉センター」などがある。

(1)大阪後見支援センター“あいあいねっと”

大阪後見支援センター“あいあいねっと”(以下「支援センター」という。)は、社会福祉法人大阪府社会福祉協議会により大阪府、大阪市、堺市からの補助を受けて運営が行われている相談窓口である。支援センターでは、意思能力にハンディキャップがある精神障害者・知的障害者・痴呆性高齢者等の権利擁護を図り、その自立と社会参加を支援することを目的として、権利擁護相談、経済生活支援サービス、啓発・情報提供事業を行っている。相談窓口は、月曜日から金曜日、午 前 10 時から午後4時まで開設されている。

また、電話相談のうち必要なケースについては、火・木曜日に開設している専門相談窓口に予約され、弁護士、社会福祉士が面接により相談に応じる体制が採られている。

具体的な援助が必要なケースについては、利害関係者・関係機関との調整、弁護士の紹介を行うとともに、権利擁護関係機関とのネットワーク化を図り、問題解決に努めている。

[1] 権利擁護相談
平成 10 年度(1998 年度)の電話相談状況は、 965 件となっている。うち精神障害者からの相談
件数は 486 件、50.4%であり、知的障害者や痴呆性高齢者を合わせた件数よりも多くなっている。相談内容では、病状や人間関係に関するものが 50%を超えており、知的障害者や痴呆性高齢者は経済的問題が多いのに比べ、相談内容の傾向の違いを示している。相談者別では、本人から
の相談が 54%を占め、知的障害者や痴呆性高齢者が関係者からの相談が多いのに比べ、傾向の違いを示している。また、同一人物からの相談が多いのも特徴である。
専門相談では、精神障害者の比率は低く、30%を占めるにすぎない。精神障害者の場合、療養生活上の悩みや今後の生活の不安等についての相談相手を求める傾向は強いことを示しているものと思われる。
一方、消費関係での具体的な事例としては、他人の賃借に巻き込まれたり、病気につけ込んだ物品の購入やお祓い等の被害があった。

[2] 経済生活支援サービス
預貯金の通帳や証券等の財産を保管する財産保全サービスと預貯金の出し入れ等を行う金銭管理サービスが行われている。サービス実施機関としては、10 市に設けられており、大阪市社会福祉協議会、枚方市社会福祉協議会、豊中市福祉公社、池田さわやか公社、八尾市社会福祉協議会、摂津市社会福祉協議会、羽曳野市社会福祉協議会、茨木市社会福祉協議会、箕面市社会福祉協議会、高槻市保健福祉振興協会となっている(平成 11 年度(1999 年度)。
サービス利用希望者は、経済生活支援計画に基づいてサービス実施機関との契約を行い、所得に応じた利用料(市町村社会福祉協議会等が決定する。ただし、低所得者には減免措置あり。) を支払ってサービスを利用する。
開設以来(平成9年(1997 年)10 月~平成 11 年(1999 年)11 月)の契約者数は 93 件となっているが、うち精神障害者 12 人で 12.9%となっている。精神障害者の契約内容としては、日常の生活費の管理の代行、被害的な妄想(盗難)より生じた援助(鍵の管理)などがある。精神障害者の場合、契約時や解約時において、病状によるものではなく、本人の意思に基づいて行われているこ とを確認することが大切だと考えられており、審査会等の活用が必要とされている。
なお、経済生活支援サービスについては、平成 11 年(1999 年)10 月から新たに創設された国制度である「地域福祉権利擁護事業」に移行し、平成 12 年度から、ほぼ全市町村において実施されることとなっている。

(2)大阪精神障害者連絡会“ぼちぼちクラブ”

大阪精神障害者連絡会(以下「ぼちぼちクラブ」という。)は、精神科への入院、通院の経験のある者及びそれらの経験者によって構成されていう患者会などにより、平成5年(1993 年)12 月に、[1]会員が抱えている問題について、情報 交換を行う。[2]会員同志の親睦や交流と府下の患者会との交流を深め、仲間づくりを進める。[3]精神障害者に対する差別と偏見をなくし、安心して暮らせる地域社会づくりをめざすこと。を目標として、結成された団体である。そして、上記目標達成のため、以下の活動を行っている。

[1] 機関紙を発行

[2] 精神保健福祉行政に参画し、精神障害者自身の声を施策に反映(大阪府精神保健福祉審議会、大阪府・市の障害者施策推進協議会、大阪市障害者政策専門委員会、関係行政機関との協議)

[3] 学習会を実施(体験発表を通じて力をつけるためのパネルディスカッションや講演会の開催)

[4] 交流会を実施(女性の交流会・「言いっぱなし、聞きっぱなし」をルールとした交流会など)

[5] 地域サロン(大阪市今里)を開催(月2回)

[6] 精神障害者自身による電話相談を実施(毎週火曜日・木曜日)

平成11 年度(1999 年度)の実績は、 1,010 件となっており、ぼちぼちクラブへの入会希望の問い合わせが 185 件、症状や薬に関する内容相談が 174 件、ディケアや病院での不服43 件、年金や生活相談等の相談25 件、話を聞いてほしいが 291 件、その他 292 件となっている。なお、電話相談にあたっては、同じ精神障害の当事者同志の気持ちの通い合いを大切にしている。

(3)大阪精神医療人権センター

大阪精神医療人権センター(以下、一部を除き「人権センター」という。)では、精神病院での人権侵害事件を踏まえ、昭和 60 年(1985 年)に設立された団体である。平成 11 年(1999 年)10 月 12 日付けで特定非営利活動促進法(NPO法)にもとづく法人格を取得している。人権センターの活動は、電話相談、病院への面会活動を行うとともに、精神科医療の改善を目指し、対行政交渉等を行っている。

[1] 相談活動
電話相談、郵便及び面会による相談を行っている。電話相談の実施日は、午後2時から午後5時までである。郵便による相談は、私書箱を設置して対応する方法が採られており、相談に関する費用は無料となっている。
過去8年間(平成元年(1989 年)~平成7年(1995 年))の相談実績では、退院や治療の目処などの治療内容に関する相談が 35%、情報提供に関する相談が 35%、生活に関する相談が 30% となっている。最近の傾向(平成 11 年(1999 年)1月~3月)として、他機関からの相談・連絡が高い比率(65%)を占めている。これは、人権センターの活動についての認知が進んだこと、利用者の立場に立った援助が期待されていることの現れであると考えられる。

[2] 訪問・面会活動
人権センターから精神病院や社会復帰施設に赴き、利用者の処遇実態の把握を行うとともに、必要な改善を求めていく活動を行っている。また、電話や郵便による相談の中から、人権センターとして支援できる内容については、面会等により問題解決のための活動を行っている。

[3] 権利擁護のための広報、啓発活動
入院中の精神障害者に保障されている権利や病院内での処遇改善、退院請求の手続等についてのパンフレットの発行を行い、擁護され行使できる権利の周知を図っている。
また、社団法人大阪精神病院協会の協力の下に精神病院の訪問を行い、適切な医療の選択ができるように、精神病院の医療・処遇の内容についての情報誌を発刊した。この情報誌には多くの注文が寄せられており、利用者の立場に立って、利用者が知りたい情報が求められていることを示しているものと思われる。一方、精神病院にとっても、従来の閉鎖的な環境での治療ではなく、開かれた医療のあり方が問われることとなり、精神科医療従事者の自覚を高めることにも寄与するものと思われる。

(4)高齢者・障害者総合支援センター“ひまわり”

“ひまわり”は、高齢者や障害者のための総合的な相談窓口として、大阪弁護士会が設置・運営する「高齢者・障害者総合支援センター」の愛称である。“ひまわり”では、財産管理支援、介護福祉支援、精神保健支援等について、電話や来館での相談のほか、必要に応じて出張相談を行っている。相談受付時間は、月曜日から金曜日、午前 10 時から午後4時までとなっており、“ひまわり”を利用した場合の費用は、相談時間や委任後の支援内容によって費用設定がなされているが、生活保護世帯や非課税世帯については相談料が免除されている。“ひまわり”の精神保健当番弁護士は、リーガルサポートの一環として、電話による出張相談の依頼があれば、10 日以内に出張して面接を行っている。

平成 10 年度(1998 年度)の利用形態別の実績は、出張相談 126 件、電話相談 269 件、来館相談 61 件で計 456 件となっている。相談種別では、一般相談が 30%、財産管理 18%、精神保健8%、遺言5%、福祉サービス4%となっている。相談種別では、精神障害者が 16%を占め、高齢者・身体障害者(いずれも 22%)に次いで多くなっている。

なお、平成 11 年(1999 年)4月~10 月における相談件数 305 件のうち、精神障害者の相談件数は 104 件(34%)となっており、最も多くなっている。また、利用形態別では、電話相談が 52%、出張相談が 37%、来館相談が 12%となっている。精神障害者関係の相談が増加しているのが目立っている。

(5)大阪府障害者110番

大阪府障害者110番(以下、一部を除き「障害者110番」という。)は、大阪府が社会福祉法人大阪身体障害者団体連合会・大阪府障害者社会参加推進センターに補助して実施されている事業である。障害者110番では、常設の相談窓口を開設し、身体・生命に関する危害、財産に対する侵害、契約関係、雇用条件関係、職場などでの人権関係等についての相談を電話・来所などの対応により行っている。相談内容によっては、弁護士や公認会計士、ソーシャルワーカー等による相談チームを編成し、問題の解決に当たっており、相談費用は無料となっている。

平成 11 年(1999 年)6月~11 月の相談、面談等の実施件数は 21 件となっている。相談等の内容は、借金返済や賃金などの経済的な問題、公費負担等の手続きに関する問題、施設内での処遇など人権侵害に関する問題であった。

障害者110番事業は開始されたばかりであり、専門的な知識や経験が必要とされる場合も多く、関係機関や障害者団体等との緊密な連携や事例の積み重ねによる各種ノウハウの蓄積が必要となっている。

(6)大阪府同和地区総合福祉センター“ヒューマインド”

大阪府同和地区総合福祉センターは、社会福祉法人大阪府総合福祉協会が運営主体となって、昭和 61 年(1986 年)6月に開設されて以来、同和地区の福祉の増進に努めるとともに、「福祉・保健・医療に関わる人権センター」として、大阪府域全体の福祉と人権の推進に重要な役割を果たしてきた。この中で、心の悩み相談、精神障害者に対する自立支援プログラムづくりや権利擁護システム構築の検討などの課題に取り組んでいる。

平成9年(1997 年)11 月から、回復途上にある、在宅の精神障害者の交流の場を整備促進し、共同活動を通じて自立と社会参加への意欲を養成するとともに、地域住民との交流機会を深めて、精神障害者に対する理解と協力を広げることを目的として、精神障害者地域交流(地域サロン)事業が実施されている。平成 10 年度(1998 年度)末時点で、4地区において 48 名が登録し、精神障害者と地域住民などが料理、手芸教室、ハイキング、カラオケ等の活動を行った。

また、現代社会のストレスや職場、家庭、近隣等の人間関係の軋轢から生じる心の悩みの解決の糸口を見つけるために精神科医など、専門カウンセラーによる人権相談として、精神障害者人権相談(心の悩み相談)を毎週木曜日の午後1時から5時(祝日・第5木曜日休み)に、面接又は電話相談の形式で実施している。同相談は、事前予約制であるが、費用は無料となっており、平成 10 年度(1998 年度)における精神障害者などからの相談延べ件数は、129 件であった。

自立支援事業としては、平成 11 年度(1999 年度)には新たに「自立支援室」を立ち上げるとともに、平成 12 年度(2000 年度)からは、障害者や高齢者などのセルフ・アドボカシー(self advocacy; 35 ページ参照) やエンパワーメント(empowerment;権限付与)を支援する予定となっている。

(7)人権擁護活動における課題

人権擁護を図る既存の諸制度や各種人権擁護機関の狭間で、入院患者に対する的確で迅速な人権擁護のための機能が働きにくくなる次のような課題が存在する。

[1] 各種相談機関の相互の連携・信頼関係が不十分なため、入院患者の人権侵害に関する情報が各機関でバラバラに集積され、結局、入院患者から見れば、どの相談窓口も十分に納得できる適切な支援者となり得ていない場合がある。

[2] 入院患者と病院職員との関係が対等でないため、あるいは入院患者としての権利が保障されていないため、入院患者による精神病院外への意思伝達が適時に行えないような場合(例えば、精神病院の看護主任が、病院の外部に院内情報が流されることを極度に嫌がるようなタイプの者である場合、電話での訴えが心理的にしづらい、あるいは物理的にテレホンカードを渡してもらえないなどの場合)がある。

[3] 入院患者が実名を出して待遇内容への不服を述べることにより、院内で制裁や尋問を受けるかもしれないという恐怖感、不安感があるため、どうしても匿名でしか不服を伝えられない場合がある。

[4] 面接のため精神病院にやってくる人権擁護機関の関係者に対し、対等に意思表示することが入院患者に十分にできない場合がある。

[5] 入院患者が退院したいのに入院させられたまま放置されているにもかかわらず、精神病院側は「身元保証人となる者が不在のため、退院先を探すことが難しい」という理由で、退院の実現に消極的である場合がある。

これらの課題の克服のために人権擁護機関と関係行政機関の有効な連携体制の構築、さらにオンブズマン制度の検討が急務である。

4 情報公開・実態調査

(1)大阪府の情報公開制度

大阪府の情報公開制度は、府と府民との信頼関係を基盤に、開かれた府政、府民参加の府政を目指し、全国で3番目、西日本では初の条例(大阪府公文書公開条例(昭和59 年(1984 年)3月28 日施行) として実施されたものである。その後、年を追うごとに制度の利用件数は増加し、平成

10 年度(1998 年度)には年間32,000 件を超えるまでになったが、府民の情報公開に対する関心が高まる一方で、制度の周知と普及は未だ十分とは言えない。すべての都道府県で情報公開条例が施行され、また、国においては、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」、いわゆる情報公開法が平成 11 年(1999 年)5月に公布された今日、大阪府の情報公開制度は、その普及と内容の充実に向けた新たな歩みをスタートさせるべき時期にきている。

(2)精神保健福祉行政における情報公開の実績

入院患者に対する違法な隔離・拘束、暴行事件や弁護士面会の拒否など患者の人権を無視する重大問題等を引き起こし、平成9年(1997 年)10 月1日に開設許可を取り消された大和川病院をめぐる一連の不祥事件の発生などを契機として、府民の精神保健福祉行政に対する関心は以前にも増して高いものとなってきている。

精神保健福祉行政関連の情報公開請求への対応実績は、平成9年(1997 年)度が 15 件、平成10 年(1998 年)度が4件である。

情報公開請求のあった公文書の中で、精神病院の入院患者の人権に特に関連するものとして、厚生省の指示に基づき大阪府が調査している「精神保健福祉資料」があるが、これについては、全病院の了解の下に、その内容のすべてを公開している。

具体的には、精神病院の施設数・病床数、従事者数、施設・病床の状況(総括・個別)、入院区分別・保護室の使用状況別の精神病院の患者数等の状況(総括・個別)、診断区分名・年齢階層・入院区分別精神病院在院患者数(総数・男女)などのデータが含まれている。ちなみに、平成10年(1998 年)度の精神保健福祉資料は総数 418 枚にも及び、通常1枚当たり 20 円の写しに係る費用が必要なため、すべての資料を請求すれば 8,360 円を要することとなり、情報公開制度も利用しやすい制度とは言いにくい。

(3)収集し、公開されるべき精神科医療情報

精神科医療の分野に関しては、他にも公開されるべき情報は多くある。例えば、[1]入院患者の転帰、すなわち治癒して退院したか否か、あるいは亡くなって退院したかという情報。特に、死亡退院については、個別ケースごとに大阪府は、精神病院から事情を聴取すべきである。現状では、事故については大阪府に報告することになっているが、死亡診断書は、亡くなった患者の住所地の市町村に届出があり、当該市町村を管轄する保健所にその写しが残ることになっているが、特定のある病院で死亡件数が集中しているというようなことはチェックできない仕組みになっている。[2]ベットの回転率、3カ月未満の在院患者率、4年以上の在院患者率、死亡退院率。[3]常勤医療従事職員1人当たりのベット数、1ベット当たりの月間外来数。つまり、病床規模と比べて外来数が多いか否か。

また、時間外の外来患者数も情報としては重要である。外来患者が多いことは、その病院が、地域密着型でオープンな医療を提供できる場になっているという重要な指標でもあり、入手し、公開されるべき情報である。[4]費用区分についても明らかにされていないが、行旅病人を多く入院させている病院か否か。このような病院の特徴が読み取れる情報は、入手し、公開されるべきである。[5]現行の精神保健福祉資料は、入院患者の年齢区分が細かく分類されておらず、18 歳未満、18 歳以上 20 歳未満、20 歳以上 65 歳未満、65 歳以上という大きな分類となっているが、東京都のように 10 歳刻みで情報を収集する方が、施策を企画する上で有効である。[6]院内感染の実態についての情報も公開され、必要な対応がなされるべきである。[7]常勤医・非常勤医、看護婦の数、その氏名、1週間の勤務時間数などの情報も、これらの情報が公開されていないため大和川病院からの不正な報告を第三者機関がチェックできず、結果的に重大な人権侵害につながったことを考慮すると、積極的に公開されるべきである。

(4)大阪府情報公開条例の制定

大阪府では、平成 11 年(1999 年)7月に策定した「新情報公開制度大綱」を踏まえ、従来の大阪府公文書公開条例を改正し、新たに大阪府情報公開条例を平成 12 年(2000 年)6月から施行する。

新条例は、従来から盛り込まれていた「知る権利」に加え、その前文に「府の諸活動を府民に説明する責務」が明記され、情報公開請求権者の範囲は、「何人も」に拡大された。また、公開請求の対象となる文書の範囲を決裁・閲覧を終了した文書に限定することなく、「組織的に用いるものとして実施機関が管理しているもの」とされたほか、フロッピーディスク等に記録された電磁的記録についても対象文書に含められた。

精神科医療は、強制的な契機を含む治療の場であり、特定の行動制限を行う可能のある医療であるので、今後とも、公開原則とプライバシーの保護を目的として掲げながら大阪府の所有する行政情報は、非公開事由に該当しない限り、すべての文書について公開することを原則とした精神保健福祉行政を展開する必要がある。

(5)適切な医療及び保健福祉サービスが提供されているかどうかの実態調査

平成 10 年度(1998 年度)まで審議を行っていた大阪府精神保健福祉審議会「生活・人権部会」においては、審議会答申の取りまとめのために精神障害者保健福祉手帳所持者等について大規模なニーズ調査を行った。そして、答申の中では、保健福祉サービス拡充の必要性と併せて社会的入院は重大な人権侵害であるとの考え方が取りまとめられた。

今後とも、入院患者の人権に配慮した適正な医療及び保健福祉サービスを確保するために、精神障害当事者の視点に立った行政施策に反映するための定期的な実態調査が必要であると考えられる。実態調査は、精神科医療の質の改善、医療従事職員の研修・啓発に役立つとともに、精神障害者の人権侵害を未然に防ぐためのシステムづくりの一環として有用なものでなければならない。

5 医療従事職員の意識啓発

大和川病院事件は、精神科医療に従事する者に精神障害者に対する差別意識が根強く残っていることを、改めて浮き彫りにした。医療従事者の意識啓発の計画的推進が、現状ではなお、重要課題のひとつであることを確認しなければならない。

大阪府内において、精神科医療従事職員の意識啓発としては、一般的に精神保健福祉に係る研修などが公民の各実施機関ごとに次のとおり行われている。

(1)大阪府立こころの健康総合センター

大阪府立こころの健康総合センターは、精神保健福祉法第6条の規定に基づき、精神保健及び精神障害者の福祉に関し、知識の普及を図り、調査研究を行い、相談及び指導のうち複雑又は困難なものを行う施設として都道府県及び政令指定都市が設置することができる精神保健福祉センターとして設置されている施設である。府立こころの健康総合センターでは、精神保健福祉業 務・活動に従事している職員の資質向上を目的とした研修や人材育成を図るための研修を行っている。研修内容としては、「(大阪府)保健衛生部精神保健福祉担当職員研修」、「関係職員研修」、「他機関との共催等による研修」などを行っており、また、セミナーや講習会の開催、学生実習の受け入れを行っている。「保健衛生部精神保健福祉担当職員研修」の中で新任及び転任の職員対象のものでは、精神保健福祉法に関して年間延べ 39 回の講座を設定している。現任職員研修においても、全体別研修、コース別研修、課題別研修、ブロック別研修等が実施されている。

精神障害者共同作業所(小規模作業所)職員対象の研修については、財団法人精神障害者社会復帰促進協会に委託して実施している。精神障害者グループホーム関係職員対象の研修については、年2回の講座を実施しており、通常 30 人程度の参加を得ている。

また、精神科医療機関社会福祉職員及び心理職員研修については、社団法人大阪精神病院協会及び社団法人大阪精神科診療所協会と連携して年間延べ7回の講座を設定し、1講座 20 人~30 人程度の参加者がある。

(2)社団法人大阪精神病院協会

社団法人大阪精神病院協会(以下「大阪精神病院協会」という。)は、昭和 41 年(1966 年)に社団法人として設立認可され、会員の相互親睦、大阪府精神障害者家族連合会との合同キャンプ、各種調査活動等を行い、精神科医療の向上に努めている。

大阪精神病院協会の会員は、大阪府内に所在する私立精神病院及び精神病室を有する私立病院をそれぞれ代表し、精神病院及び精神障害者医療施設についての調査研究、資質の向上、精神保健福祉思想の普及、精神障害者の治療及び社会復帰を推進することに賛同した者とされ、医療従事職員の意識啓発を図るため、次の各種事業を行っている。

[1] ピア・レビュー「病院相互訪問」の実施
大阪精神病院協会では、大和川病院事件を契機として、従前から検討していた「ピア・レビュー」と称する同協会所属会員の病院相互訪問を平成 10 年(1998 年)秋から実施している。訪問実施方法については工夫を重ね、平成 11 年度(1999 年度)は、同協会会員が看護部長や事務長等を同行して相互訪問を実施している。

[2] 研修会及び講演会の実施
大阪精神病院協会では、精神障害当事者や人権に関し造詣の深い講師などを招き、人権講演会を実施しているほか、大阪府の医療監視及び精神病院実地指導を踏まえ、指摘のあった問題点の是正に努め、大阪府内の医療関係団体と「人権問題等検討委員会」を発足させている。
また、大阪精神病院協会が設置する大精協看護専門学校で行われている文化祭において人権問題への取り組みなども行っている。

(3)社団法人大阪精神科診療所協会

昭和 45 年 (1970 年) に設立され、地域精神保健活動等を行ったきた大阪精神科診療所協会は、平成 11 年 (1999 年) 4月に社団法人として認可された。

社団法人大阪精神科診療所協会には、精神神経科の診療を行っている約 150 の診療所が所属し、公益的な精神保健活動、学術講演会及び各種講習会等を実施している。

様々な職種の医療従事者が連携・協力し、よりよい医療の提供を目的として、平成9年に「精神科診療所医療従事者研修交流委員会」を発足させ、「全体研修交流会」と府内を4ブロックに分け「ブロック研修会」を行っている。

いずれも、全職種の職員が毎回 80~ 140 人参加している。

(4)社団法人日本精神科看護技術協会大阪府支部

「患者さんに暖かい手を差しのべる」、「職業倫理の高揚に努める」、「組織を拡大し学びの輪をひろげる」、「精神保健福祉の普及啓発に努める」をスローガンとして結成された社団法人日本精神科看護技術協会大阪府支部は、平成 11 年(1999 年)度で結成 31 年を迎えた。

会員相互に自己研鑽を重ね、精神科看護の専門的技術の向上と精神保健福祉思想の追求を図るため、大阪精神病院協会と連携して、各界の専門家を招き、各種研修会、講演会、看護研究発表会を実施している。また、大阪府内の精神病院に対して、病院訪問活動も実施している。

平成 11 年(1999 年)4月現在、会員数は、80 施設で 1,409 人となっており、平成 10 年度(1998 年度)は、13 回の研修会を実施し、中間管理者等研修会においては、33 病院から 161 人の参加を得ている。

(5)大阪地域精神医療を考える会

大阪における地域精神医療の研究と実践活動の推進を目的とする大阪地域精神医療を考える会は、地域の精神科診療所を拠点として、医師、病院職員等のパラメディカル、保健所相談員、福祉事務職員など、精神保健福祉に関わる職種横断的な専門家からなる任意団体として組織されており、精神科医療等について、「閉鎖された病棟の開放」をテーマに、自主的な勉強会を運営している。昭和 51 年(1976 年)に第1回総会を開催し、平成 11 年度(1999 年度)には 25 回目の総会を行っている。

現在、同会会員の所属は、6病院、11 診療所、保健所、精神障害者共同作業所(小規模作業所)、精神障害当事者とその家族会など広範囲にわたり、「各職種の交流」、「職場の枠を越えた付き合いの場」が同会の特徴となっている。

(6)各精神病院における職員研修の課題

大阪府内の各精神病院においては、規模や回数の差こそあれ、概ね何らかの形で医療従事職員に対して研修が行われている。

しかし、精神保健福祉法に基づく精神病院実地指導の際に実施している職員からの聞き取り調 査では、数カ所の精神病院において、最近1年以内に病院内における研修を受講したことがない、あるいは受講した記憶がないとの回答があった。病院内における医療従事職員の研修は、精神

保健福祉法、医療法などの法令の理解のみならず、入院医療の質の向上に欠かせないものであり、自主的な取り組みが期待されるところである。

人権意識の啓発が必要なのは、精神科医療従事者に限らない。一般の医療従事者にとっても、また一般市民を含むすべての人々にとっても、同様である。しかし、精神病院における人権尊重を基本とした適正な医療を確保するためには、精神科医療従事者が、まず率先して意識啓発の事業に取り組む必要がある。

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