お知らせ

一人芝居「私 精神科医編」│アンコール配信

2021.10.13 UP


くるみざわしんさん脚本の一人芝居をアンコール配信

◆「私 精神科医編」ストーリー
精神科病院で勤務する精神科医が仕事帰りに行きつけの食堂に寄る。食事を終えて紅茶を飲みながら、病院勤務のソーシャルワーカーだった食堂の主(あるじ)に、その日に起こったことや入院中の方とのやり取りを話しているうちに、「精神科医」という羽織をかぶってごまかしてきた自分自身の内面が露わになってゆく。精神科病院に入院中の方が自由に外出ができないことや、持ち物が制限されること、さらに保護室や拘束による治療に意味があるのかという問いかけが始まる。

私 精神科医編
トレンブルシアター2020

日時

【1回目】2021年11月20日 13:00

【2回目】2021年12月1日 20:00

開催方法zoomウェビナー

動画配信 1000円

講師 くるみざわしんさん 精神科医 劇作家

くるみざわしん劇作家。精神科医。1966年長野県生まれ。
北区つかこうへい劇団戯曲作法塾、伊丹想流私塾で劇作を学ぶ。本戯曲集収録の「ひなの砦」が2016年のOMS戯曲賞佳作に、「精神病院つばき荘」が2017年の日本劇作家協会新人戯曲賞最終候補に選ばれる。2019年から東大阪市の就労支援作業所「リカバリースペースみーる」との共同製作に取り組み、「私 精神科医編」を執筆。その後、「私 ケースワーカー編」「あなた 精神科医編」を連作。

診察でそう打ち明けられる度に、またかと思う。医師になった当初は「申し訳ないんですけれど、『完全に』は証明できないんですよ」と断っていたが、これって職場から病者を排除するために雇い主が医者の証明書を悪用しているだけじゃないかと気が付き、職場の上司に来院を促して、患者のいる前で、「ガンバレと早くを職場の禁句にしてください」と言うようにした。上司はたいてい苦虫を噛み潰した顔になる。私は苦虫になった気分で患者を見る。うっすら笑っていることが多い。しぶとい上司だと「ガンバレと早くを禁句にしたら仕事になりません」と言う。「じゃ、ユーモアを忘れないで」と返すと目を白黒させる。上司もたいへんなのだ。
無理無体な要求をあの手この手で切り抜けないと成り立たないのが精神科医療の現場だが、公演するなら検査を受けて新型コロナにかかってないことを証明しなさいという要求にはマイッタ。検査でわかるのは限られた正しさだし、感染症は証明書発効後にうつる。実のない診断書を掲げないと芝居ができない。排除される。お客様への誠意がないと言われる。今度は私が当人になって『完全に』を証明しなくてはならない。お金を払って検査を受ければ証明書を書く医者はいる。金がないなら無償で検査を提供しますよという財団もある。新型コロナを商機に自由診療を拡充し、保険診療を切り崩して一儲けを企む方々に頭を下げるべきか。アメリカで新型コロナの死者が多いのは医療格差に原因があり、その元凶は市場原理に貫かれた医療体制にある。検査を治療でなく、不安の解消のために売り込む手口は実は不安をあおり、排除の論理で世の中を串刺ししてゆく。自粛警察ここにありだ。
「コロナよりも人が怖い」―敬愛する先達の声が聞こえる。どうせ立つなら排除される側に立つ。芸術も医療もかくありたい。それでないと守れない当事者性を失調したくない。新型コロナが世に登場する前に、そんな思いで書いた一作を今、世に問うてみたい。

くるみざわしん(劇作家、精神科医)

2020年4月に予定されていた「精神病院つばき荘」は緊急事態宣言により公演延期になりました。コロナウイルスの影響は、精神科病院への面会や訪問活動だけでなく、表現という手段で発信する機会も難しくしています。
私たちの権利擁護活動も、舞台・演劇も継続を模索しながら動画配信によってファンのみなさまとつながり、コロナ収束後のイベント再開を願って企画するのがこの動画配信です。「精神病院つばき荘」を楽しみにされていたみなさまへ、トレンブルシアターの舞台をお届けいたします。
この動画配信の収益は、私たちの活動を支える資金になります。また、コロナ禍において激変した演劇活動を応援するカンパも含まれています。

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