権利侵害や虐待の阻止にとりくむ精神科アドボケイトってなに?
2021.07.09 UP
精神科アドボケイトをご存じですか?
精神科アドボケイトとは
精神科アドボケイトは、精神科医療機関(以下「精神科病院」)に入院中の方の権利を守るために活動します。
病院との関係について
病院側と適宜、または定期的に話し合いしますが、それは病院に対して上の立場から監督や勧告を行うものではありません。病院とのは、一定の緊張関係が必要ですが、病院を敵視して攻撃するわけではありません。
安心できる医療になるように人権状況や療養環境の改善向上を図ります。
入院中の方の権利擁護が必要な理由
多くの精神科病院で、強制入院、隔離、身体拘束、電話・面会・外出の制限などの人権の制限が日常的に行われています。病院が強い権限を持っていて、入院中の方には味方になる人がつく仕組みがありません。
入院中の方の権利擁護を目的とした法制度として精神医療審査会はありますが、入院届や定期病状報告の審査は書面上の形式的なチェックがほとんどで、その審査システムは不十分です。退院請求、処遇改善請求も本人からの請求を待つ制度です。そして、請求件数が少なく、十分に機能していません。
さらに、精神科医療機関は療養環境や医療の進め方にも課題があり、プライバシーがまもられていない、説明が不十分といったことがあったり、職員による暴力、金銭着服といった事件も、いまだに各地で発覚しています。
そして、長期入院、社会的入院がまだまだ多く、入院中の方は限られた人生の時間を奪われ、その状況は幸福追求権の侵害ともいえます。
精神科アドボケイトは、どのような姿勢で活動するのですか?
精神科アドボケイトは次の3つの姿勢で活動をします。
1「本人の味方」という姿勢
中立の第三者的な立場ではなく、入院中の方の側に立ちます。ご本人が医療を受けたくないのであれば、その意向に沿って活動します。
2「病院からの独立」という姿勢
具体的には、支援を希望する入院者は、
① 病院を経由しなくても利用を申し込めること、
② 活動の場所、時間、方法などは病院側と調整しても、管理・監督は受けないこと、
③ 面談はご本人が望んだ場合を除き、病院職員の同席なしで行うこと、
④ 面談内容は、ご本人が伝達を望んだ事項を除き、病院側へ伝えないこと、
などの枠組みで活動します。</p >
3「守秘義務」を厳守する姿勢
個人情報や面談内容は、ご本人が伝達を望んだ内容を除き、秘密を守ります。
精神科アドボケイトは、実際にどのような活動をしますか?
病棟内(閉鎖病棟や隔離室)まで出向きます。それによって、病院の閉鎖性が減り、風通しが良くなるというメリットがあります。
そして、
① まずはお話を聞きます。
② 入院中の方の権利を伝え、権利を守るために活動します。
③ 必要があれば、ご本人の了解を得て、専門職や関係者につなぎます。その中では、エンパワメントの理念を大切にし、ご本人が本来持っている力を発揮できるよう、心理的な支援や知識・情報の提供を行います。その一環として意思決定支援、意思表明の支援も行います。
※家族との連絡調整、退院先の確保などはアドボケイトではなく、ソーシャルワーカーの仕事です。
医療内容のうち医学的・専門的な部分は、基本的には対象にしません。しかし、例えば「納得していないのに薬を無理やりのまされている」という声があれば、どうしてそのようなことが起こるのか、その背景にある医療の進め方について、入院中の方の権利が守られているのかという視点で一緒に考えます。
【掲載内容】
精神科アドボケイト事業はどのような方が対象ですか?/精神科アドボケイトはどのような方々がなるのですか?/事業内容は2種類あるのですか?/病院訪問活動が必要な理由/個別支援活動の具体的な内容を教えてください。/病院訪問活動の具体的な内容を教えてください。/精神科アドボケイトに対する報酬や保険などは、どうなっていますか?/他
精神科アドボケイトがテーマのシンポジウム・研究会の開催
2021年7月31日 無料公開オンラインイベント 申込受付中>>>詳細・申込み
精神科病院でも入院中の方の人権がまもられないといけないことは当たり前のことですが、神出病院での虐待事件に限らず、当センターに寄せられる相談からしても、入院中の方の権利がまもられる仕組みが整っているとはいえません。 大阪でこれまで行ってきた「精神科アドボケイト」(精神科病院に入院中の方への権利擁護活動)は全国に必要です。大阪での活動も制度化され、さらに充実させる必要があります。 私たちは、多くの方にこの活動を知ってもらいたい、入院中の方やご家族から利用してもらいたい、いろいろな方にご参加いただきたい、ご協力いただきたい、拡げていきたいと考えています。
プレ企画開催決定 7月21日ライブ配信 「精神科アドボケイトってなに?」
権利擁護システム研究会2021
│申し込み受付中│2021年度開催決定 全6回>>>詳細・申込み
大阪精神医療人権センターの活動の3つの柱の一つは、社会をかえるための発信をすることです。そのための提言や意見書の原案を作るのが、権利擁護システム研究会の役割です。
この研究会では精神医療保健福祉に関する様々なことがらについて、現状や課題を整理したうえで、「解決するにはどうすればよいか」を具体的な形にしていきます。
再放送企画決定 7月31日シンポジウム有料配信特典
シンポジウム開始前に有料参加者限定で、2020年度開催の権利擁護システム研究会を再配信いたします。研究会への参加をご検討されている方は、この機会に事前に雰囲気や配信の様子をご覧ください。>>>詳細・申込み
配信予定
2020年10月24日開催権利擁護システム研究会
彼谷哲志さん(当事者・精神保健福祉士)
精神科病院の文化と当事者のリカバリー
大阪精神医療人権センターが行うアドボカシー
大和川病院事件とは
大和川病院は大阪市の南東、奈良県との県境に近い柏原市の大和川沿いにある単科精神病院(524床)です。大阪円生病院(大阪市東住吉区、内科337床うち老人213床)とともに医療法人北綿会が経営していました。安田病院(大阪市住吉区、内科250床うち老人130床)は個人病院ですが、3病院の実質的な経営者は安田病院院長安田基隆でした。 大阪精神医療人権センターは、1993(平成5)年に大和川病院でおきた患者暴行死事件以降、この病院が劣悪な処遇により患者の人権を蹂躙し続けてきたことを取り上げ問題にしてきました。1997(平成9)年に病院立ち入り調査が実施され、経営者は逮捕、起訴。3病院は廃院されました。
精神科へ入院中の方のための権利擁護活動
この事件の後、大阪府では精神科病院を訪問し報告書を公開する精神医療オンブズマンが制度化され、現在の療養環境サポーター制度につながっています。このとりくみは現在大阪だけで行われていますが、精神科病院の中で発生する人権侵害は地域を問わず発生しており、全国的に権利を守るためのしくみが必要とされます。私たちは権利擁護を行う精神科アドボケイトを全国的な制度として拡げるために、事業モデルを提案し政策提言を行っています。
病院に入院中、自分の物が盗まれても誰も相談にはのって貰えなかった過去がぼくにもあります。それは7年前のことです。
入院中、朝起きるといつも付けている腕時計がありませんでした。
時計がない閉鎖病棟だったので腕時計がないと不便で困ります。
また、その時計は気に入って買ったのでとても大切にしているものでした。