お知らせ

電話相談についての意見交換会を開催しました。

2022.07.25 UP

電話は精神科病院に入院中の方にとっては病院の外の人と話せる、とても大切なツール(手段)です。精神医療人権センターでは精神科に入院中の方から「誰にきいたらよいかわからない」「どのように相談したらよいのかわからない」「職員さんに相談しづらい」「相談しても願いが叶わない」などの切実なお電話をいただきます。そういった相談を受ける中で電話相談の受け手(相談員)は、電話をくださった方おひとりおひとりの気持ちやおかれている状況を懸命に想像し、考え、お話を聞いています。
5つの精神医療人権センターで一斉に行った電話相談の終了後に各センターから電話相談の受け手の方々に集っていただき、意見交換会を開催しました。
意見交換会では、電話相談の対応について大切にしていること、感じていることなどを共有し、意見交換をしました。
ここでは電話相談受け手を続ける理由やこの意見交換会の感想をご報告します。

(1)かけてくる方がいるから かけたいときにかけられるところがあることは大切だと思います。 どこにも話せない、相談できないことがあり、だからここにかかってくるのではないかと思っています。 かけてくるひとがいるから、電話相談だけは続けようと考えてきました。  病院の中から自主的に外へアクセスできるのは電話だと思います。数少ない外部との繋がりなので大切にしていきたいと思っています。 (閉鎖的な空間である)病院の中と外をつなげるために電話相談は重要だと思っています。

(2)電話をくださる方の「想い」から 「明日からも生きていこう」と思っておられるのかなと想像します。 「何を言いたいか」というのを大切にしながら聞いています。ご本人が動ける力になれたらと思っています。

(3)それぞれの「立場」での経験から 家族の立場はある日、突然になります。どこにいっても本人を連れて行かないと相談でき ない状況で、孤立感がありました。家族のことが落ちついた時に、活動に参加してみたいと思っていました。 事業所でソーシャルワーカーをしていた時に、入院につなげた利用者さんがいました。入院した途端、病院から情報ももらえなくて、何度も交渉したがダメでした。3ヶ月後に面会に行けた時は、保護室で拘束されていて、ガリガリになっていました。自分が「良くなる」と思って入院につなげた結果を見て、愕然としました。それから私たち支援者はどうするべきかということを常に考えながら、この活動に参加しています。 普段は看護師として患者さんと関わっています。その関わりでは本音は聞けないし、立場上、上下関係がそこには発生してしまいます。しかし、病院の外部の第三者としてボランティアとして話を聞くと、相談者さんの本音が聞けることがあり、そのことに意味を感じます。 病院の中で勤務していて病院内の現実を知ったことが活動参加のきっかけです。

(4)様々な立場の人と一緒に センターに関わることで、当事者や弁護士などの違う立場からの見解を聞くことができます。すると、普段病院で見ている風景(入院者が大切にされていない現状)を客観的に見られるようになり、センターに関わっていかないといけないと感じました。

意見交換会に参加して

フクちゃん  神奈川精神医療人権センター 専門職の人たちばかりで、当事者の自分がいていいのか心配になることもありました。人権センターでは誰から連絡が来るのか分からないので、ドキドキしてます。また、それが面白さになればいいんですが。 で、とりあえず話して頂くのですが、電話を切ってまとめる時、「なんだったっけ」ということがあり、反省したりします。試行錯誤しながら、自分が一番やりやすい方法を見つけている最中です。

井上博之 看護師  大阪精神医療人権センター 相談される方に対してまずこれまでの大変な経験や思いをされてきたことをねぎらいたいと思っています。助言やアドバイスの前に、お聞きして共感を示すことの大事さを改めて感じています。

石原孝二  埼玉県精神医療人権センター センターに関わったきっかけの話が印象深かった。この活動は大変なところがあるが、重要な活動。それぞれのストーリーがわかって嬉しかった。

西川良一 精神保健福祉士  兵庫県精神医療人権センター 一斉電話相談では自分の住む地域には精神医療人権センターがないけれどどうしたらできるかというような連絡がありました。このような活動の広がりが必要ではないかと思っています。これからもその思いで入院中の方の思いを聞いていきたいです。

大西香代子 看護師  大阪精神医療人権センター 現状(こんなにもたくさんの人が非自発的入院をさせられている、こんなにもたくさんの人が超長期入院をさせられている)についての認識が社会全体で共有されているとは言い難く、なかなか改善しないことに怒りを感じているのですが、同じ思いをもつ人が全国にいて、地道に活動を続けていることに希望を見いだせました。

奥原孝幸 作業療法士  神奈川精神医療人権センター 神奈川では病院に今回の企画のポスターが貼られたことで多くの電話がきています。「何とかならないか」と言われて困ったこともあります。でもその中で話を聴いていくことが必要だと思います。 公衆電話からこのような電話をいただけて、苦しい入院生活の中でも「何とかしたい」という気持ちを持っておられることにホッとし、でも何もできない自分がいて気持ちが重くなった面もあります。 今回はこのような機会に参加させていただき、気持ちが引き締まる思いと、温かさを感じさせていただきました。この両方の気持ちを持ちながら、失敗も多く本当に微力ではありますが、この電話相談に向き合いたいと思います。

木村朋子 内山智絵 精神保健福祉士  東京精神医療人権センター 東京は広報活動は何年もしておらず、ひっそりと電話相談のみ続けてきました。今回の一斉相談を期に、都内のみならず全国各地から相談が寄せられるようになり、広報の影響力に驚き感心しています。 稲川洋 家族  神奈川精神医療人権センター 電話相談の取り組みの充実のためには、諸々の制度や施策を勉強することと同時に、同じ活動をしている人たちと経験を交流することが大切であることを改めて感じました。電話を受ける側の我々が孤立しがちになりますので。神奈川では月2回、電話対応の経験交流の場を設けていますが、こうした全国レベルで経験を交流し合うと、それぞれの人権センターが独自の歴史や体制を持っているだけに、スタンスの違いも分かって有意義だと思います。その意味では、意見交換のテーマを「同一県内の入院患者からの相談」と限らない方がより幅広い経験の交流が出来たのではないかという気がします。いずれにせよ、こうした活動を維持していくだけでも容易ではないので、お互いに励まし合って続けていきたいものです。

濱田唯 精神保健福祉士  神奈川精神医療人権センターお話しをきくこと 今回、3名の方のお話を伺う中で、皆さんがいかに相談者さんのお話を聞くことを大切にしているかを知ることができました。普段は周りの人に本音を話せない状況にある人が、「ボランティア(病院の外の第三者)にしか話せない本音がある」という言葉や、「相手の話が妄想かもしれないと決めつけてしまうと壁ができて、話が聞けなくなってしまう可能性がある」ということ、そして「まず邪魔せずに話してもらうことが大事」という言葉など、心に残るものがたくさんありました。 悩みながらも続ける理由 そして皆さんの中に、悩みながらも電話相談を続けているストーリーがありました。それぞれの背景は違いますが、同じ気持ちで電話相談に取り組んでいる仲間として、よい雰囲気の中でお話することができたと感じています。素敵な機会をいただき、私自身とても感謝しています。ありがとうございました。

戸田竜也 作業療法士  埼玉県精神医療人権センター 意見交換会を終えて、主に感じたことは3点あります。 「聴く」こと 電話相談において、相談者の言葉にできない苦しさや悔しさといった思いを受容し、言葉を紡いでいくスタンスが重要だと改めて感じました。電話を受ける人は具体的な対応に困難を感じることもありますが、私は入院中の方が安心して相談できる窓口であることが大切だと思いました。 「つなぐ」こと 一度の電話相談で把握できることは限られています。しかし、継続して話を伺うなかで入院している方の力になれることが具体化していくのではないかと感じました。また次に「つなぐ」ことも重要であり、関わりの起点は電話相談ですが、そこから面会などの関わりへも広がっていくと思いました。 「つながる」こと 閉鎖的な精神医療のなかで、入院中の方が自主的にアクセスできる数少ない窓口であることは言うまでもありません。電話相談というツールが入院している方々をエンパワメントする存在になり得ると感じました。さらに、電話相談を担う人たちもつながり、お互いの知恵を出し合っていくことにより、電話相談が成熟していくと思いました。またこのような場を持てるといいなと思いました。

佐名川紀子 家族  大阪精神医療人権センター

ただひたすらきく 電話の向こうの声を、ただひたすらきこうとする姿勢は、相談活動にかかわる期間の長さに関わらず皆さんが大切に続けられてきたものだということが分かりました。それでも20年、35年と続く活動の重みは、ひとことでは表現できないとも感じました。 人権センターの個別相談活動というのは、ある人にとっては自分とは無関係の話に思え、ある人にとってはとてつもなく放っておけない話なのではないかとも思いました。これまで、声をひたすらきいてこられた方々がおられることを実感しました。そして長くこういった活動を続ける人がいても、それでも放っておけないこと(精神医療の問題)は世の中から消えてなくならない、だから自分としてもできることから取り組みたいという気持ちを再確認する時間となりました。 身構えなくてよい 声をきかせていただくことにおいて、なにか大それたことをする、なにかを解決する、専門的なことをする、など、身構えるようなことは必要なく、相談の中で対話をしたり、繋がりを持つ、無理をしない、などがこの活動の基本だと再認識しました。 意見をきき合える機会 他センター、他地域で活動を続けておられる方々と出会えてうれしかったです。なによりも、さまざまな意見をきき合える機会は、相談活動の更なる充実や向上に不可欠だと思いました。忘れそうになっていた大切なことをいくつも思い出しました。

入院経験のある立場から~電話相談に入る思い~

意見交換会に急遽、参加できなくなった方が電話相談に入るその思いを教えてくださいました。

つらかったこと・希望をもてたこと
自分の経験なのでだれもがそうとは言えないですが、自分が入院したときは、最初の2週間くらいがいちばんしんどく、その後は少しずつ落ち着きを取り戻すことができました。そのときは主治医に対して「1週間後に退院したい!」と一生懸命に訴えましたがスルーされ、とてもつらかったです。そういうつらいときに、「それはつらいですね」といってもらえたら嬉しかったかもしれないです。
今になって振り返ると、希望を持ち続けることが大事だと思います。自分が入院していた時に希望をもてた言葉は「退院できる」でした。隣のベッドの人など入院仲間の支えがありました。「あなたは学生?どこに住んでいるの?」といったような普段の自分のこと、そして「退院したい」という話もきいてくれました。

気を付けていること
電話相談の時には、自分の体験談は押し付けになってはいけないので「自分の場合はですけれども」と断りを入れて話すことはあります。

自分の入院経験から
電話相談をしてきた入院中の人に対しては、つらいことなどを話せる患者さんや職員さんがいるかをきいてもいいかもしれないですね。
そして、精神医療人権センターにもまた電話してもらってもいいかもしれないです。
次の診察の時もあきらめずに退院の話をしてみるかどうか、それから、主治医や看護師に対してどういう言い方、どういう質問の仕方がよいのかを一緒に考えることもできるかもしれないです。 
もし入院した頃の「とにかく退院したい」という想いだった自分が審査会や弁護士会を知っていたら、電話をかけたかどうかはわからないけれども、そういう窓口があることを教えてもらえたらうれしかったかもしれないですね。

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現在、当センターの活動には、当事者、家族、看護師、PSW、OT、医師、弁護士、教員、 学識経験者、マスコミ関係者等の様々な立場の方が、世代を超えて参加しています。当センターは精神科病院に入院中の方々への個別相談や精神科病院への訪問活動、精神医療及び精神保健福祉分野への政策提言活動等を行っています。

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