隔離・身体拘束について
精神科のスタッフの中には、隔離拘束等の行動制限をしたい人なんていないんです。隔離拘束をしないと患者さんも医療者側も両方が苦しいことがあるわけです。医療者側も大変な重責を負っているということも、理解してもらえればと思っています。
つまり、病院側として行ってきた努力も、やはり聞いてもらったり、認めてもらったりしてもらいたい点ではあります。隔離拘束なしに治療できるなら、そうしたいと思っています。
もしも、1対1の看護ができるなら、それも一つの方法だと思います。それでご本人が落ち着くのなら、それは治療としても評価されるので、診療報酬請求ができるようにといった議論につながるかもしれない。
スタッフはもしも入院中の方から暴力を受けても、無抵抗のままでいるでしょう。そうしなければ治療にならなくなってしまいます。加えて、当院では看護師は女性が多く、入院中の方が興奮して殴られたり蹴られたりすれば、ダメージはとても大きいものです。わたしも入院中の方に殴られたことがないわけではありません。
措置診察なんかに入ると、落着いたら普通にやりとりもできるはずだと思いながらも、かなりの興奮状態の方を前に「どうしたらいいものか」と思うこともあります。そういった場面で、どうしても強制治療が必要な場面があるということも知ってもらいたいです。
その意見の違いを超えていくために必要なことは、お互いをもっと知る努力もいるのだと思います。
そして、隔離拘束を指示する立場の医師としては、どうしても他の患者さんや看護師が怪我をしないようにということを考えます。だから、行動制限下でも開放観察で様子をみて、確認していきます。以前は、隔離拘束を外してまた必要になった時には全ての手続きを最初からしなければならなかったのでとても手間がかかりました。今は「開放観察」をもうけ、その間は隔離拘束などの制限の解除に向けて、制限を外す時間をもつことができます。これで実際的には早く隔離拘束が解けるようになっていますし、そういったやり方は、ずいぶん定着してきているのではないかと思っています。