病院に行って感じること
日本の精神科病院では、職員さんが一人一人にちゃんと向き合いたいと思っても、人手の問題でそれができないことが多いかもしれません。僕も普段の障害者福祉の仕事の中で、職員の数が少ないときは余裕がなく雑な対応をしてしまっていると感じることはあります。日本の精神科病院もデンマークのように患者ひとりあたりの職員数が増えた方が良いと思いますが。それが叶わなくても、人権センターから面会に行ったボランティアが、忙しい職員の代わりにゆっくり話を聞いて病院の職員に伝えるというのは、患者さんと職員さんの双方にメリットがある気がします。
面会活動は僕にとって、親戚のおっちゃんの家とか、老人ホームにいるおばあちゃんに会いに行くような感覚で楽しみにしている面もあります。皆さん面会の日を楽しみにしてくださっているので、お会いして話をするだけでも価値はあるかもしれません。
お会いする方の中には、気持ちの揺れがありながらも、時には「ずっとここ(病院)にいたい」と言う方もおられます。僕はそういう方には無理に退院を促そうとは思ってはいなくて、その方が病院の外の人とのつながりを持ってるだけでも意味があると感じています。「何かあればお手伝いしますよ」というスタンスで繋がり続けることもきっと大切です。
精神科病院の管理的な側面は、マイペースで気性の荒い面もある祖母には合わなかったようです。ぼくは普段の祖母の様子を知っているので「こういうことをされたら調子が悪くなくても興奮して怒る」と理解していましたが、病院の職員さんは病気になる前の祖母の様子を知りません。たとえば病院の厳しいルールに激怒してナースステーションに入って怒鳴りつけるようなことは僕の祖母にとっては普通のことですが、病院の職員さんは病気の症状ととらえていました。見舞いにいったときに主治医と話す中で「祖母はふだんからこういう性格で…」と伝えていくと、2か月ほどで祖母は退院しました。入院患者本人の声より家族の話を病院の人はよく聞いてくれた印象があります。家族がいない人には、ボランティアが面会を重ねてその人の話をよく聞き、気持ちを代弁するのが大事だと思って、活動に参加しています。