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北海道で精神医療の権利擁護活動がまもなく開始

2023.06.15 UP

北海道で精神医療の権利擁護活動開始

精神科病院に入院している方は、たとえ同意した入院であっても権利侵害に遭いやすい環境にあります。外部へSOSを発信することが難しく、地域や立地を問わず権利擁護のためのサービスを保障することが必要です。病院から独立した立場で入院中の方の相談にのり、権利行使をサポートする団体は大阪をはじめいくつかの地域で活動していますが、新しく北海道でも取組がスタートしました。

どさんこコロ公式webページ

北海道の精神科病院事情

病院数は都道府県別最多、病床数も12位

2021年度の北海道精神保健福祉審議会資料によれば、北海道の精神科病院数は103です。これは都道府県の中で一番多いです。北海道が広いので当然だと思われるかもしれませんが、人口が一番多い訳ではありません。人口10万人あたりに直すと全国で12番目に病床数が多いです。

2019年度の630調査によれば、在院患者の身体的拘束指示は全国1位です。10万人あたりの認知症入院者数が全国中2番目に高いです。

全国の退院率は90%で期間は平均12カ月です。ところが、北海道は86.5%なんです。65歳以上の方たちが全国と比べて倍以上いらっしゃいます。ということは、北海道の精神科病院に入院中の方々は、2/3が65歳以上ということになります。入院期間が1年以上の長期入院で65才以上の方も全国平均よりも大幅に多いということが見えます。このグラフからも北海道独自の課題を読み取ることができます。

精神科アドボカシー団体は、入院者の側に立って話を聞き、権利を守る手助けをするとともに、精神科病院で安心して医療を受けられる環境構築を目指すものです。いかがでしょう、北海道に精神科アドボカシー団体は必要でしょうか。

独立アドボケイトとしての「どさんこコロ」

どさんこコロは、北海道民のこころという意味に加え、アイヌ語の「コロ」(「持つ」という意味)から、「人としての権利を持つ」、「つながりを持つ」からインスピレーションを得てネーミングされました。協力メンバーの中には疾患のご経験者、ご家族、医療福祉従事者、弁護士、教員など幅広い方々が関わっています。どなたも精神科病院を開かれたものにするために熱意がある人たちの集まりです。独立アドボケイトとして第三者の立場から精神科病床の入院者を中心に電話相談を受け、面会に出向き、本人の困りごとや悩みごとを聴き、安心して医療の利用や地域生活ができるように、情報提供などのアドボケイト活動を行います。

  1. 専門職によるフォーマルなアドボカシー
  2. 家族や友人など身近な人によるインフォーマルなアドボカシー
  3. 本人と同じような経験を持つピアによるアドボカシー
  4. 第三者による独立アドボカシー

下記の図のように4つのジグソーパズルが組み合わさることで適切なアドボカシーが実現できます。私たちはこの中の独立アドボカシーを実践します。

出典:令和3年度 厚生労働行政推進調査事業費補助金(障害者政策総合研究事業)地域精神保健医療福祉体制の機能強化を推進する政策研究精神障害者の意思決定及び意思表明支援に関する研究 —入院中の精神障害者の権利擁護に関する研究—から抜粋、一部改編 ~最近の動向~

電話相談受付開始に向け準備中

精神科病床に入院中や入院経験者、家族、関係者からの電話相談を予定しています。4月8日に、大阪の活動参加者をゲストにデモプレイなどを交えた電話相談員養成講座が開催されました。電話相談の研修を受けた担当者が交替で電話を受けます。受けた電話の内容により、面会活動や、支援機関等につなげます。スタート時期は夏ごろを予定しています。最新の情報は、どさんこコロwebページをご確認ください。

これからの精神科アドボカシー

~最近の動向~ 
最近は、厚生労働省の検討会注1)の中で精神医療におけるアドボケイト制度の導入が盛んに議論されました。精神科アドボケイト制度は精神科病床の入院者の権利を擁護し、本人が権利を適切に行使できるように援助することを重視します。 精神科病床では医療上の理由から、安全や規律を重視するために様々な制約があります。また、入院者と職員の関係は上下関係になることがあります。さらに、閉鎖病棟や保護室など外部と遮断される特殊な環境が存在します。そのため、本人の立場に立ち、丁寧に話を聞き、本人をエンパワメントする第三者による独立の精神科アドボケイトが必要です。

注1)厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課 地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会 2021年10月11日から2022年6月9日に13回開催

大阪の先行事例は2024年の法改正で制度化される

どさんこコロの活動は、当面、札幌圏限定の取り組みですが、北海道でも2名のスタッフが病院を訪ね、話を伺えるように準備を進めています。これは入院中の患者さんから相談をうけて面会に行くアドボカシー活動です。大阪で続く個別面会活動は、これを一つのモデルとして2024年法改正で制度化されます。現在大阪より情報提供しながら見守っている課題がいくつかあり、これからの動きに注目しています。権利を守るという本質から離れることがない制度でなければいけません。厚労省で準備されている制度化された活動と大阪の活動は全てが同じものではありませんので、大阪精神医療人権センターでは大切にしている理念を守りながら制度化に協力しつつ、全国的に精神科権利擁護が拡がっていくことを望みます。

この『精神科アドボケイト』の制度化について、7月17日に大阪にてシンポジウムを開催します。
厚労省をはじめとして様々な立場より視点を変えながら制度化された精神科権利擁護についての講演です。詳細
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「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案(令和4 年10 月26 日提出) 概要」P 9 厚生労働省ホームページ「第210 回国会(令和4 年臨時会)提出法律案」より

北海道での精神科権利擁護活動を応援するには

どさんこコロを支援していただける方や、ご寄付をくださる方に、ニュースレターをお届けできるように、準備中です。活動についての最新情報は公式webサイトに最新情報を掲載いたします。どうぞよろしくお願いします。

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*本記事は日本財団助成事業の一環として作成しました。

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現在、当センターの活動には、当事者、家族、看護師、PSW、OT、医師、弁護士、教員、 学識経験者、マスコミ関係者等の様々な立場の方が、世代を超えて参加しています。当センターは精神科病院に入院中の方々への個別相談や精神科病院への訪問活動、精神医療及び精神保健福祉分野への政策提言活動等を行っています。

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