資料 安田系病院問題に対する大阪府の取り組み
(大阪府、平成10年11月報告書の抜粋)
3 今回の教訓を踏まえた改正点
今回の事件の教訓を踏まえ、平成9年度の医療監視から以下の改正を行い、監視を実施している。
- 複数の病院を有する法人に加え、同系列と思われる病院についても同時に医療監視に入るべく保健所間の調整や、課題のある病院に対する具体的な医療監視の実施方法についての事前協議を行うなど工夫を行う。
- 精神保健福祉法や健康保険法等を所管する関係各課との相互の連携を密にし、病院の対応が悪質であれば、必要に応じて調査の合同実施や情報の相互交換等を積極的に行なう。
- 医療法上適正を欠く疑いのある病院に対しては、事前に通告を行なうことなく抜き打ちで医療監視を行なうとともに、必要に応じて医療従事者に対する面接調査を行なう。
- 府民等から寄せられた確度の高い情報については、府の医療相談や各保健所等とも連携を密にし、適切に処理していく。
- 患者の処遇について問題があると疑われる場合においては、患者本人からその処遇等について直接聞き取り調査を行なう。
- 医療監視の充実強化を図り、医療監視に従事する職員の資質の向上を図るため、医療監視に関する研究会を設置し、そのあり方について検討を行なう。
また、医療監視の法幕岐のあり方については、引き続き国に対し要望していくとともに、あらゆる機会を通じて関係機関と協議しつつ、より適切な医療監視が実施できるよう努めていく。
今回、大和川病院の入院患者さんの人権が充分守られていなかった事実を重く受け止め、以下の改正を行い実地指導体軸の強化を図っている。
- 病院に対して改善指導を繰り返しても効果が見られない場合は、速やかに改善命令を行い、その事実を公表する。
- 入院患者さん等から苦情等があった場合、本庁職員のみならず、地域の保健所職員が現場に駆けつける体制を構築する。
- 原則年1回の実地指導体制を見直し、必要に応じて複数回の実地指導を実施するとともに、地域の保健所と連携して患者さんからの直接の聞き取り等を重視した調査方法に改善していくことにより、入院患者さんの処遇の実情をより正確に把握し、きめ細かに指導できる体制をとる。
- 今後、問題のある病院については医療法や健康保険法を所管する関係課との合同調査の実施や情報の相互交換を積極的に行うことにより指導の効果を高める。
救急医療体制の充実強化のため、以下の点について改善を図ることとした。
- 救急患者の増加に円滑に対応するため、現行1日6床の空床確保を1日7床とする。
- 民間当番病院での受診体制の強化策として、精神牌旨定医などのスタッフ確保を支援する。
- 公民の役割分担を明確にし、中宮病院の機能強化を図るとともに、薬物の使用などにより特別な配慮を必要とする患者の受入は中宮病院を中心として対応する。併せて、民間病院から中宮病院への転院、急性期を脱した入院患者の民間病院への転院についてシステムづくりを行う。
精神保健福祉審議会では知事からの諮問を受けて生活支援部会を設置し、平成9年12月に『障害保健福祉圏域の設定』および『精神障害者地域生活支援センターのあり方』を中心とする精神障害者の生活支援方策を中間答申していたが、今回の問題を契機に、以下のように審議会の体制強化を図った。
- 今回、精神障害者の人権侵害についての実態が明らかになったことにより、入院患者だけでなく精神障害者全般の人権の尊重を基本にした施策の推進が不可欠との認識のもと、同審議会を人権の視点に立脚した運営を行うこととし、同審議会委員に当事者及び人権団体代表3名を委嘱した。
- また、生活支援部会を生活・人権部会と改編するとともに臨時委員として当事者及び人権団体代表を含め新たに5名を委嘱し、最終答申に向けての審議の視点を明確にした。
- 医療機関からの届出について、関係書類の点検や状況聴取に努め、通り一遍の書類チェックに終わることのないよう工夫を行う。
- 複数の病院を有する法人に加え、同系列と思われる病院については、関係各課との間で調整や事前協議を行い、同時に多角的な調査に入る等、調査時における不正防止に努める。
- 府民等から寄せられた確度の高い情報については、関係各課との連携を図りながら必要応じ抜き打ち調査を実施する。
- 従来から行ってきた医療機関に対する個別指導について、府民等から情報提供のあった医療機関を優先的に実施する。
また、指導通知期間を大幅に短縮し悪質な医療機関に対しては監査を実施する。 - 患者の一部負担金過払額の返還については、医療観閲に対し、監査時に口頭で返還するよう指示を行ってきたが、返置誓約を文書にて提出させる。
保険者に対しては、被保険者あて通知を早急に行うよう指導する。